人工知能分野では、創設期から(人間の)総合的な認知機能をモデル化する「認知アーキテクチャ」が研究・開発されてきました。AGI研究は、総合的な認知の仕組み(=アーキテクチャ)すなわち汎用的な認知アーキテクチャを作り出す研究に他なりません。
近年は、生物に学んで認知アーキテクチャという取り組みが出てきています「生物学にインスパイアされた認知アーキテクチャ(BICA)」。
日本でもそうした動きの一つとして、脳に学んで認知アーキテクチャを設計しようという「全脳アーキテクチャ」の試みが注目されています⇒全脳アーキテクチャ勉強会
認知アーキテクチャの分類
認知アーキテクチャは、用いる表象(おおまかにいってデータ構造)によって、記号主義的なもの、分散表象的なもの、両者の折衷的なものに分類されます。記号主義的なアーキテクチャでは、プログラムコード内にある外界のものごとを表す「記号」を操作することによって知能を実現しようとします。分散表象的なアーキテクチャでは、ものごとはおおまかにいってベクトルで表現されます。神経回路網にヒントを得たコネクショニストアーキテクチャはこのアプローチの典型例です。上記3つの他に力動的なアプローチをとるアーキテクチャも存在します。
既存の認知アーキテクチャの例
Soar(古典的&記号主義的な認知アーキテクチャ)
認知心理学での研究に用いられており、近年は脳の知見を取り込んでいますが、記号的なアーキテクチャとみなされます。
参考)森田純哉:統合認知アーキテクチャの魅力と困難 ACT-Rを利用した研究事例
OpenCog(「AGI」の名付け親 Goertzel 氏による折衷的なアーキテクチャ)
LIDA(Global Workspace Theory に基づく折衷的なアーキテクチャ)
MicroPSI(Dietrich Dörnerの Psi 理論に準拠する折衷的なアーキテクチャ)
Leabra(前頭皮質基底核作業記憶モデルに基づき、制御と学習に重点を置く分散表象的アーキテクチャ)
NengoSPA (Semantic Pointer Architecture) Unified Network の実装モデルであり、分散表象的な一種の全脳アーキテクチャです。
BICA Society のサイトにさまざまな認知アーキテクチャの比較表が載っています(といっても上記で紹介したものの一部しか載っていなかったりするので、認知アーキテクチャを網羅するのは困難であることがわかります)。
また、Wikipediaやこちらのサーベイ記事(どちらも英語)でも認知アーキテクチャの比較を行っています。