Chris Eliasmith は、著書「How to Build a Brain: A Neural Architecture for Biological Cognition (Oxford 2013)」の中で、Core Cognitive Criteria(中心的認知基準)という認知アーキテクチャの評価基準を提唱している。
以下に項目を整理しなおしたものを提示する。「1. 表現構造」の項目の多くは、言語表現に関する記号的な立場とコネクショニスト的な立場の間の議論から出てきたものである。※Fodor & Pylyshyn: “Connectionism and Cognitive Architecture: A Critical Analysis” (1988)
Eliasmith はコネクショニストであるがために(コネクショニズムが苦手とする)言語的な表象が要求する条件に対して真摯に向き合わなければならないと考えているのであろう。
彼のCCCでは、コネクショニストモデルが得意である可塑性の部分はあっさり流されているが、記号的なアプローチを取る場合、適応能力について逆にしっかりと要件を押さえていく必要があるかもしれない。
表現構造
Systematicity:表象の構造が体系化されていること 例)"John loves Mary." がOKなら "Mary loves John." も文法的に許されること
Compositionality:表象の意味が構造によって決定されること(cf. Frege の原則)
Productivity:有限の表象(例えば辞書項目と文法規則)から無限の表象(文など)を生成する能力
(Massive) Binding:複雑な表象を持つために(大量の)基本表象を統合する能力 いわゆる「バインディング」の問題。複数の時空間に分布する表象要素をまとめて単一の状況として認識したり、複数の時空間に分布する同じタイプの表象要素を別々の表れ(トークン)として認識する能力
Syntactic generalization:意味と独立に表象の構造(構文など)を操作する能力 例)Colorless green ideas sleep furiously.
可塑性
適応能力(Adaptability)(学習能力など)
記憶(Memory)
実際性
Robustness:モデルのノイズ耐性など
Scalability:スケーラビリティ
理論に対する評価
Triangulation(三角測量):脳についてのデータとの一致
Compactness:理論の簡潔さ(オッカムのかみそり)