映画コラボ「オープニングトーク」山川宏

「こんにちは,

会場にお集まりのAI研究者,神経科学者,

そしてハッカーの皆さん 

近い未来,

この会場全ての知能を結集したとしても,

単純な人工知能にすら及ばなくなってしまう. 

知覚を備えた人工知能がインターネットに接続すれば,

歴史上の全人類を集めた知能すら上回ってしまう. 

知性のあらゆる面において,

人工知能が人間を超越するとき,

科学者はこれをしばしばシンギュラリティと呼びますが,

私はこれを「トランセンデンス」と呼びたい.」 

これは,映画の冒頭で,

ジョニー・デップが扮する天才科学者ウィルが

シンギュラリティについて語ったシーンです.

この場面は,

シンギュラリティとそのインパクトを端的に語っていると思い

あらためて紹介させていただきました.

しかしシンギュラリティのインパクトは

それほどに大きいのでしょうか?

私達人類は,これまでにも,農業革命,産業革命,IT革命などを

経験してきました.

しかしこれらにおいては,技術向上を担っていたのは,

保存と伝達が可能なメディアを利用したに人間の頭脳でした.

これはリチャード.ドーキンスの言うミームと見ることもできます.

これに対して,シンギュラリティにより引き起こされる変化の本質は,全くレベルが異なります.

ここでは技術向上の担い手が,人間から人工知能という機械に置き換わります.

つまり人間レベルの人工知能は人類の手による最後の発明となります.

さてこの映画の中では,

天才科学者ウィルの妻であるエヴリンが,

死に瀕した夫の自我を

スーパーコンピュータにアップロードするところから

ストーリーが展開されます.

ただ,エヴリンは

夫の意識をアプロードしようとする以前から

超越した人工知能がもたらす豊かな未来をイメージし,

アップロードされたウィルも

妻の夢を実現したいと願ったのです.

そこで本日の共同企画では,

そうしたエヴリンの夢を一つの軸としながら進めてゆきます.

まずは,市瀬先生と私が,映画の中に現れる

人工知能などの技術とその実現性についてお話します.

そして松田先生には,人工知能がいかに人を越えうるか,

さらにそれが現れた時の社会への影響についてご講演いただきます.

後半はこれを受け,

人類が超越的な人工知能に対して抱く感情などにつき,

栗原先生の司会によるパネル討論を展開します.

そして最後に,当学会の元会長である堀先生に

ご総括頂きます.

ここで,本企画の発端についてふれておきますと,

映画の宣伝を進める株式会社キコリ様から

当学会長である山口高平への打診でした.

ですので,このオープニングトークは

山口会長に行っていただくべきものではありますが,

残念ながら,ご欠席のため

私が代理をさせていただきました.

最後となりますが,本共同企画は,

多くの関係者より支援を受けております.

映画をご提供頂いたポニーキャニオン様,松竹様,

会場を提供頂いた「愛媛大学ITスペシャリスト育成コース」の小林真也先生,

広報活動にご尽力頂いた「IT推進協会様」「商工会議所様」「県庁情報政策課様」,

今,会場にて撮影いただいている愛媛ケーブルテレビ様,

そして人工知能学会の全国大会運営関係者様,

汎用人工知能研究の皆様ありがとうございます.

重ねて御礼申し上げると同時に

本企画が今後の人工知能研究にとって

意義深いものとなるよう,

講演者/パネリスト一同,努力していきたいと思います.

ご清聴ありがとうございました.