第3回全脳アーキテクチャ勉強会 〜海馬:脳の自己位置推定と地図作成のアルゴリズム〜

第3回全脳アーキテクチャ勉強会風景

第3回全脳アーキテクチャ勉強会開催趣旨

 全脳アーキテクチャ(WBA)研究の最終目標は,人レベルの汎用人工知能を工学的に最速に実現することです.そして,そのために人間の脳全体構造における知的情報処理をカバーできるように脳に寄り添い/参考としたAIアーキテクチャを構築することが有望だと考える研究アプローチです。


 2013年度末からスタートしたこの勉強会シリーズでは,脳の計算機能をできるだけ簡単な機械学習の組合せとして実装するために,2回目以降は各回において脳の各器官に対応した内容での講演とパネルを進めてゆきます。


 3回目となる今回は「海馬:脳の自己位置推定と地図作成のアルゴリズム」をテーマとし,WBA構築に必要な機能は一体何か,現段階でどこまで実現できているかを,ボトムアップの神経科学的知見とトップダウンの工学的知見の両方を踏まえて明らかにしていきます。

 人において新皮質の内側に位置する海馬は,記憶の座ともよばれ,日々のエピソードについての記憶に関わりますが,進化的には新皮質よりも古く齧歯類においては自己位置推定とマップ生成を同時に行うSLAMとしての機能が中心となります。

そこで当勉強会では,海馬のSLAMとしての情報処理の観点を中心に,三名の先生によるご講演と引き続くパネル討論を行います。

    • 海馬をはSLAMとしてどこまで理解できるのか
    • 自己中心座標から環境中心座標への変換機構
    • 時系列情報の取り扱い
    • 長期記憶と短期記憶:なぜ二つのメモリシステム(情報表現)をもち転送するのか
    • Deep learningのように統計的学習を行う新皮質を海馬はどう支持するのか
 今回の勉強会を通じて,人間のように柔軟汎用な人工知能の実現に興味のある研究者,脳に興味のあるエンジニア,関連分野(神経科学,認知科学等)の研究者間での交流を,さらにはかりたいと期待しています。終了後は新橋駅周辺にて有志による気軽な懇親会をおこないます。

勉強会開催詳細

日 時:2014年4月22日(火曜日) 18:25-20:45(開場: 18:15)

場 所:リクルートGINZA8ビル(G8) 11Fホール
    東京都中央区銀座8-4-17 リクルート銀座8丁目ビル
http://www.recruit.jp/company/office.html
    (※リクルート様らの好意による会場ご提供)

定 員:定員230名(定員に達し次第締め切らせて頂きます)

参加費:無料

申込方法:ATND( http://atnd.org/events/49541 )で本イベントに参加登録のうえ,受付でお名前(IDなど)をお知らせ下さい.(※本勉強会の開催は終了しました。)

講演スケジュール

18:20-18:30 オープニング(富士通研究所 山川宏)

18:30-19:00 「SLAMの現状と鼠の海馬を模倣したRatSLAM」(産業技術総合研究所 横塚将志氏)

第3回全脳アーキテクチャ勉強会 - 横塚将志氏
ロボット・ナビゲーションのコア技術である地図と自己位置の同時推定Simultaneous Localization And Mapping (SLAM) の概要と現状について説明し,鼠の海馬を模倣したRatSLAMと通常のSLAMとの差異を議論する。


 ■発表資料
 「SLAMについて

  1.移動ロボット
  2.ナビゲーション
  3.自己位置同定
  4.SLAM(Simultaneous Localization And Mapping)
  5.地図と位置の同時推定
  6.SLAMの本質



19:00-19:30「海馬神経回路の機能ダイナミクス」(公立はこだて未来大学 佐藤直行 教授)

全脳アーキテクチャ勉強会佐藤氏
海馬は脳部位の中でも特に記憶機能を担う部位として知られる。今回はナビゲーション課題を中心に,海馬神経回路の構造,場所細胞のシータ位相歳差現象,内嗅野グリッド細胞,海馬傍回の視覚シーン関連部位,などについて概説し,海馬の情報処理機能について議論する。

■発表資料
 1.海馬とは?
 2.ラット海馬とナビゲーション
 3.ヒト海馬とエピソード記憶
 4.まとめ

■プロフィール
公立はこだて未来大学 佐藤直行教授

19:40-20:10「人工知能(AI)観点から想定する海馬回路の機能仮説」(富士通研究所 山川宏)

脳で情報の入出力を担う新皮質が大きく発達する進化段階以前から,海馬を中心とした器官は生存に必須のいくつかの時空間的な認識行動機能を担っていたと思われる。そしてこの機能は,知能エージェント(AI分野)では,主にゴール志向エージェントに対応づくと思われる。そこで海馬周辺回路の機能の中でSLAMのに結びつく,自己中心座標から環境中心座標への変換機能とその一般化や,そこにおける情報表現等に関わる仮説を中心に紹介する。

■発表資料

 1.WBAの研究戦略: アーキ仮説の生成と洗練
 2.AIからの全脳アーキテクチャ仮説(α版)
 3.目的ベース・エージェントとしての海馬
 4.まとめ

今回は海馬の回でしたが,前半では全脳アーキテクチャの原型として,知能アーキテクチャーと脳の対応付けを行っています。

20:10-20:45 パネル討論

パネリスト: 佐藤直行氏,横塚将志氏,山川宏氏, 一杉裕志

   進行: 松尾豊

パネルにおける主な議論として,海馬と新皮質の担うべき計算機能について,様々な意見が出された。特にプランニング等の機能については海馬と前頭葉のどちらが担うべきか等について,会場からの問いなどを含めて意見が交わされた。

第3回全脳アーキテクチャ勉強会パネルディスカッション1
第3回全脳アーキテクチャ勉強会パネルディスカッション2

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